アンキアライン

ルイジ・ノーノの音楽(主として後期作品)について

2016-12-02から1日間の記事一覧

断ち切られない歌 後篇の上 1/9

こだま、海の歌(承前) 「こだま、海の歌」から「メルヴィル、船の歌」へ向けて、海にお船を浮かべるための準備作業。それゆえに、 砂漠はサクッと通り過ぎてしまいたい ノーノがエドモン・ジャベスの砂漠へと誘われた経緯は、例によってカッチャーリ→ノー…

断ち切られない歌 後篇の上 2/9

ヴェネツィアの石(承前) 「石を聞く」、その言葉の意味を探るために。1988年のサン・マルコ寺院前の談話のなかで、ノーノが「架空のスピーカー」と言っていたことを思い出そう。80年代のノーノが没頭していたライヴ・エレクトロニクスは、ヴェネツィアの空…

断ち切られない歌 後篇の上 3/9

水浸しの島 港は青い時の終りではない 阿部良雄『夢の展開(沖積舎)』、33頁 無辺のものを産みだすためになにものかの辺が必要とされるという反射の逆説を、ノーノはラグーナに浮かぶ小舟の上で漏らした最後のひとことでさりげなく乗り越えようとしていたの…

断ち切られない歌 後篇の上 4/9

メドゥーサの族 「音の海」とか「音の島」とか言ってるけれど、音というものはそもそも固体か液体かそれとも気体なんですかと問われれば、音は狭義には空気中を、広義には気体だったり液体だったり固体だったりするさまざまな媒体を伝播していく弾性波である…

断ち切られない歌 後篇の上 5/9

ゴーン 人間のメドゥーサっぽいところが視覚だけではなく聴覚にも及んでいることを確認するために、頭のなかで鐘の音を鳴らしてみる。 ゴーン ゴーン ゴーン キーン コーン カーン これは和風の鐘の音。英語圏だと多少表記が変わってDing Dong...になる。ド…

断ち切られない歌 後篇の上 6/9

ノーノが一度だけ来日した折(1987年)に一度だけひらかれた講演(12月1日)の内容は、これまでに何度も引用したことがある。その講演は、水声社から出ている『現代音楽のポリティックス』という本に収められている。ノーノを含めた5人の作曲家(クリスチ…

断ち切られない歌 後篇の上 7/9

近藤譲の音 近藤譲が語る音の手触りは、それはもうとにかく固い。なにしろ「ひとつの音」のさらに上をいく「一個の音」なる恐るべき表現が出てくるのだから。 そこいらに転がっている石ころ一つもきれいですし、音一個も美しいですし、 *1 * 聴くのは旋律の…

断ち切られない歌 後篇の上 8/9

FUKAKAIな音楽 「浜辺で石をみつけようとするように、音をみつけている」、あるいは「浜辺で散歩しながら貝を集めるように音を集めた」とケージが言っているのを聞いて、言葉尻をとらえるようではあるが、「ああやはり」と私は思う。やはりケージのイメージ…

断ち切られない歌 後篇の上 9/9

ノーノの音 ノーノの講演 *1 の前半部は以前の記事で紹介した。その内容は、ノーノが黒板に描いた三段階の図で要約される。これは直接的にはフランドル楽派の作曲技法を模式図にしたものであるが、ノーノ本人の作曲法のエッセンスを示した図だと受けとってか…