アンキアライン

ルイジ・ノーノの音楽(主として後期作品)について

No hay caminos

Un unico suono 1/5

Con un suono, si può lavorare forse un’ora. ―― 「ひとつの音でおそらく一時間は作業ができます」 *1 Luigi NonoとMary Jane West-Eberhardの収斂進化 Omaggio a György Kurtágのハラフォンは、一つの音を、3種類の異なる空間的運動へと分化させる。... s…

Un unico suono 2/5

この項はノーノではなく丸ごと進化生物学の話である West-Eberhardがよく言っているように、表現型可塑性は、進化生物学の舞台でかなり長いこと陽の当たらない場所に逐いやられていた不遇の演者であった。 作曲家にすら影響を与えるくらいであるから、DNA二…

Un unico suono 3/5

ノーノ風ゲノミクス Archivio Luigi Nonoが保管しているノーノのスケッチや創作メモをもとに、ノーノの作曲のプロセスを復元しようという試みがこれまでにいくつも行われている。それらを見ていて感じるのは、音やリズムの配列をつくり、それをいろいろに並…

Un unico suono 4/5

2° No hay caminos, hay que caminar.....Andrej Tarkowskij 1987年11月28日に東京はサントリーホールにて初演されたNo hay caminos, hay que caminar.....Andrej Tarkowskijは、御存知のとおり全篇がG音というun unico suonoでつくられた音楽である(un un…

Un unico suono 5/5

音の質 後期のノーノは、音の「質」ということをさかんに口にするようになる。「Qualità, non quantità――量ではなく質」。 *1 「量よりも質」などという台詞は、世界じゅうで合算すれば一日あたり千人以上の人が言っていそうなくらいの陳腐な紋切型に聞こえ…