アンキアライン

ルイジ・ノーノの音楽(主として後期作品)について

2014-04-14から1日間の記事一覧

断ち切られない歌(ブルーノーノ 第二部) 前篇 1/8

まえおき:ノーノと二つの音の世界 + 連続性感覚 1 話のとっかかりとしてまず、コントラバス奏者のStefano Scodanibbioによるノーノの思い出話を読んでみよう。 ……そしてarco mobileという運弓の技術も産み出され、Gigi † はそれをPrometeoのスコアで不滅の…

断ち切られない歌 前篇 2/8

一度めの脱線:漂泊者と連続性 よい連続性とわるい連続性。それを海の連続性と陸の連続性と呼ぶこともできるだろう。 二枚の絵がある。左側は陸上の光景だ。道と、そうではない領域との截然たる区別。あらかじめ定められた遠くの目的地に向かって続いていく…

断ち切られない歌 前篇 3/8

4 これまで述べてきた二つの音の世界にほぼ対応する事例を、ノーノは音楽の歴史のなかにもみいだしている。それが シナゴーグの歌(より一般的にはユダヤの音楽) グレゴリオ聖歌(より一般的には西欧の音楽) の対である。80年代のノーノはこの話題にしょっ…

断ち切られない歌 前篇 4/8

二度めの脱線:感情と連続性 その1 ブルーノの感情論 相反する複数の感情の「同時的な」生起というノーノの立脚点は、ブルーノの「感情論」の大前提とじじつまったく同じものだ。『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』の岡本源太曰く、「苦しみがなければ楽しみ…

断ち切られない歌 前篇 5/8

二度めの脱線:感情と連続性(承前) 1987年に出版されたノーノの談話、 Bellini: Un sicilien au carrefour des cultures méditerranéennes そのなかでノーノは、ベッリーニは歌を「自然な抑揚で流れるように」したのだという先の批評の意味するところをこ…

断ち切られない歌 前篇 6/8

Risonanze erranti. Liederzyklus a Massimo Cacciari 1985年9月のPrometeo決定版初演をもって、カッチャーリとのほぼ10年にわたる共同制作の関係――これは端的に言えば、カッチャーリがテキストを編纂し、それをノーノが音楽化するという関係である――に区切…

断ち切られない歌 前篇 7/8

うわべ 寡黙な音楽――それがRisonanze errantiの第一印象である。 Time and again the sharp strokes of the bongos, the gentle sounds of the crotales and the mysterious Sardinian bells seem to vanish into broad expanses and long pauses between fr…

断ち切られない歌 前篇 8/8

ノーノとユンガー Risonanze errantiの声にみられる母音と子音の取り扱いには、ユンガーの『母音頌』と共鳴する要素が少なからず認められる。ひょっとしたらノーノは『母音頌』を読んだことがあるのではないだろうか、とかねがね私は思っていた。Fondazione …